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報告:ストレス、うつ病とアロスタティック負荷バイオマーカー

疾病管理予防センター(CDC)によると、米国では成人の10人に約1人が現在うつ病を患っていると訴えています。うつ病の重症度と種類は、軽度の悲しみから臨床的に定義された大うつ病性障害まで、二日間のものから二週間、もしくは二年間のものまで多岐にわたります。大うつ病性障害は、一時的な悲しみや損失の感情よりも深刻な病態を指し、男性と比べて女性のほうがより一般的に診断されます。大うつ病性障害の生涯発生率は女性で20%であるのに対し、男性はその約半分に発生します。自殺発生率と同様、うつ病の数は年齢とともに増加します。自殺は米国における主要な死因であり、うつ病で最も頻繁に起こる合併症です。臨床現場では、大うつ病性障害の主症状は疲労、頭痛、体重変化や腹部の異常など身体的なものが多くみられます。以下の症状のうち最低でも5つのものに当てはまり、顕著な苦痛や機能障害がほぼ毎日、最低二週間続いた場合には大うつ病性障害と診断されます。

  • 悲しさやむなしさを感じる
  • イライラもしくは活力の衰えを感じる
  • アクティビティへの興味もしくは喜びの減少
  • 疲労もしくは活力の喪失
  • 食欲の変化と体重の増減
  • 倦怠感
  • 不眠もしくは過度の睡眠
  • 思考もしくは集中の困難
  • 死もしくは自殺について繰り返し考える

大うつ病性障害は多因子性の疾患です。ある種の投薬、乱用物質、アルコール、低い社会経済学的状態を含む慢性の健康状態は、より高い発生率と関連しています(例えば、肥満、神経性疾患、自己免疫疾患、慢性痛)。遺伝的感受性もうつ病に寄与しており、情動障害またはパニック障害の家族歴はうつ病のリスクを高めます。心理社会的ストレス要因なしに大うつ病性障害が起こる可能性があると考えられてはいますが、ストレスや人間関係の喪失、社会的援助の縮小と対立的な人間関係がリスクを高めることは確実です。特に、若年期における重大な喪失や虐待の経験は、後年に大うつ病性障害を発症しやすくなる素因となります。

精神的ストレスは炎症誘発性サイトカインの産生を促します。炎症誘発性サイトカイン(すなわち、IL-1, IL-6, TNF-α, IFN-γ)は大うつ病性障害の危険因子として知られています。大うつ病性障害はこれらメディエーターの産生増加と集積の両方と関係し、脳内のトリプトファン代謝に影響を及ぼすことがわかっています。トリプトファンはセロトニンの合成に関与している必須アミノ酸で、セロトニンは不安感、落ち着きのなさ、衝動性、攻撃性、うつ病などの気分を除去する神経伝達物質です。

トリプトファン代謝には、キヌレニン経路とセロトニン経路の2つがあります。前者は、炎症誘発性サイトカインによって促される酵素インドールアミン2,3‐ジオキシゲナーゼによって引き起こされます。この経路の中間物は、神経毒性3-ヒドロキシキヌレニン、キノリン酸、神経保護性キヌレン酸を含みます。保護的なキヌレニン経路と変性のキヌレニン経路の代謝物の不均衡(すなわち、キノリン酸/キヌレン酸比率の増加)は、慢性のうつ病と関連する神経変性的な変化において重要な役割を果たすと考えられます。加えて、活性化された酵素インドールアミン2,3‐ジオキシゲナーゼはこれら2つの経路のバランスを変化させ、トリプトファン代謝のキヌレニン経路に有利に働きます。これによりセロトニン経路から基質が奪われ、結果としてセロトニン合成が減少します。脳内でセロトニンが不足もしくは減少することにより、うつ病につながります。

トリプトファン代謝におけるキヌレニン経路とセロトニン経路のバランスの変化は、ストレスによって誘発されます。住環境、職場、人間関係、コミュニティ、健康に有害な行動様式などのストレス源への長期的及び/または反復的な曝露が大うつ病性障害の発症に先立ち、年齢に関連した健康問題や障害に対するリスクを徐々に増します。短期的には、ストレスへの暴露は視床下部脳下垂体‐副腎系(HPA)、自律神経系(交感神経および副交感神経)、心血管、免疫系による適応的、保護的作用を引き起こし、カテコールアミンやグルココルチコイド、サイトカイン、セロトニンの代謝回転も高まります。しかし長期的には、これらのシステムのなかで頻繁および過度に反応が起きた結果、過剰にメディエーターに暴露し、体の器官に害を及ぼす可能性があります。

アロスタティック負荷という言葉は、長期的な生理学的ストレスにより蓄積された悪影響や消耗状態を表すのによく使われます。その典型例は、体が副腎グルココルチコイド(コルチゾール)を浪費することへの代償にみることができます。ストレスがかかっているときの短期的な正味効果はグルコースの産生とその保存です。しかし、副腎系が繰り返し活性することで血中のコルチゾールが高濃度な状態が長期にわたって続くと、インスリン抵抗性、腹部肥満、アテローム性動脈硬化、高血圧などのアロスタティック負荷につながります。

臨床現場では、キノリン酸/キヌレン酸比率を含むアロスタティック負荷を測定するため、医師らは様々なバイオマーカーを用います。その例として、ウェスト・ヒップ比、心血管マーカー、グリコシル化ヘモグロビン、炎症マーカー、尿中セロトニン、カテコールアミン代謝物、同化作用対異化作用のバランスの評価が挙げられます。

キヌレン酸、キノリン酸、セロトニン、カテコールアミンの代謝産物は、USバイオテック研究所の代謝プロファイルで測定することが出来ます。