寄生虫についてもっと学ぶ。

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寄生虫トリビア

その1 寄生虫は変身してヒトの体内に入ってくる

卵から産まれるだけでなく、寄生虫の中には、シスト(嚢子(のうし)とも言う)という休眠状態のサナギのような形態やオーシスト(接合子嚢(せつごうしのう)とも言う)という卵のような形態でヒトの体内に運ばれた後、栄養型に変化して活動を開始するものもいます。

  • ジアルジア・ランブリエのシスト
  • ジアルジア・ランブリエの栄養型

出典:NIID 国立感染症研究所

  • クリプトスポリジウムのオーシスト
  • クリプトスポリジウムの栄養型

出典:神奈川県衛生研究所

その2 宿主の行動をコントロールする寄生虫もいる

寄生虫の中には、次世代への繁殖のために宿主の行動を巧妙にコントロールするものもいます。驚きですね。

メジナ虫(ギニアワーム)

出典:wikipedia

ケンミジンコを中間宿主とし、ヒトを終宿主にしています。メジナ虫のメスは、ヒトのお腹の中で成長した後、ケンミジンコの住む水中に幼虫を産まなければなりません。そこでメジナ虫のメスは、成長すると足先まで移動して皮膚に炎症を作り、そこに激しい痛みと熱い感覚を与えます。寄生されたヒトは、それをやわらげるために足を水につけてしまいます。するとメジナ虫は皮膚をやぶって水中に幼虫を放出します。水中の幼虫はケンミジンコに寄生し、それを含む水をヒトが飲むことによって、再びヒトの体内に戻ってきます。90cmほどに成長するものもいるそうです。

ロイコクロリディウム

出典:wikipedia

オカモノアラガイというカタツムリの仲間を中間宿主とし、その触覚に寄生し、触覚がイモムシに見えるような模様を表します。本来カタツムリは暗い所を好みますが、行動をコントロールし、明るい所に行くように仕向け、終宿主である鳥に食べられやすいように誘導します。

トキソプラズマ

ネズミを中間宿主とし、ネコを終宿主としています。トキソプラズマに感染したネズミは無気力になり、反応が鈍くなります。ふつうのネズミはネコのにおいを感じると逃げますが、トキソプラズマに感染したネズミはネコのにおいを怖がるどころか、むしろ引き寄せられるようになり、ネコに食べられやすくなります。ヒトもトキソプラズマの中間宿主ですが、トキソプラズマに寄生されたヒトも、もしかすると行動をコントロールされているかもしれません。

寄生虫の仲間たち

どちらかと言うとユーモラス(?)なものからニョロっと少し気味の悪いものまで、寄生虫は様々な姿をしています。その一部をご紹介します。

ランブル鞭毛虫 クリプトスポリジウム・パルバム 赤痢アメーバ トキソプラズマ原虫
二核アメーバ 回虫 旋毛虫 有鉤条虫

出典:NIID 国立感染症研究所寄生蟲図鑑 (飛鳥新社ポピュラーサイエンス)

これであなたも今日から寄生虫博士?~寄生虫の詳細情報~

小腸を占領するジアルジア・ランブリエ(別名:ランブル鞭毛虫)

DATA

  • 病名:ジアルジア症
  • 感染経路:経口感染
  • 日本での感染:あり

人の顔やオバケのように見えるジアルジア。ヒトへはシストが口から入って感染します。30ほどのシストを口にするだけで感染すると言われています。感染すると下痢になりますが、症状が出ないこともあります。海外旅行者が感染する寄生虫として知られていて、原虫の感染症としては最もメジャーです。最近では、欧米で水道汚染による集団感染が報告されています。ジアルジアは、体長10~20μmで4対8本の鞭毛を持っています。ヒトに寄生すると、小腸で鞭毛を使って泳ぎまわったり、吸着円盤と呼ばれる平らな吸着面で小腸の粘膜にくっついたりします。感染者の下痢便では、元気に遊泳しているジアルジアを観察出来ます。一方、下痢のような症状が出ない感染者の便には、ジアルジアのシストが含まれています。この便で感染が広まるので、症状が無くても治療をしなくてはなりません。

激しい下痢を引きおこすクリプトスポリジウム・パルバム

DATA

  • 病名:クリプトスポリジウム症
  • 感染経路:経口感染
  • 日本での感染:あり

世界中に分布する原虫の仲間で、ウシ、ブタ、イヌ、ネコ、ネズミなど約80種の哺乳類に寄生しています。ヒトや動物の腸の粘膜にあるヒダの中で増殖します。分裂して増えることもあれば、オスとメスに分かれて受精して増えることもあります。受精して増える場合にのみ直径4~5μmのオーシストと呼ばれる卵のようなものを作り、便とともに動物の体外に排出され、オーシストが口に入ることで感染します。感染して1週間くらいすると、激しい水っぽい下痢と腹痛や吐き気が続きます。下痢の症状は、1日あたり数回から20回以上とヒトによって様々です。有効な治療方法は無く、症状によっては入院が必要な場合がありますが、健康なヒトでは、大体1~2週間で自然に治まります。乳幼児や免疫不全患者は症状が悪くなることがあるので、感染しないような注意が必要です。クリプトスポリジウム・パルバムを殺すためには、水処理に用いられている30倍の塩素濃度が必要です。通常の塩素処理ではほとんど効果がありません。

赤血球を喰い散らかす!赤痢アメーバ

出典:寄生虫ビジュアル図鑑

DATA

  • 病名:アメーバ赤痢
  • 感染経路:経口感染、性行為感染
  • 日本での感染:あり

赤痢アメーバの栄養型は動物の体内でしか生存できません。赤痢アメーバはシストに姿を変え、感染したヒトの便に混じって体外に排泄され、新たな感染を引き起こします。ヒトの口から体内へ入ったシストは、分裂をしながら大腸にたどりつき、大腸の粘膜層に侵入し、赤血球を食べながら増殖します。血液の混じったイチゴゼリーのような下痢便と腹痛が見られ、このような症状を赤痢アメーバといいます。大腸の壁から血流に乗って肝臓や肺、脳などに移動して増殖し、膿瘍を形成することもあり、これを腸管外アメーバ症といい、とても危険です。

トキソプラズマ原虫

DATA

  • 病名:トキソプラズマ症
  • 感染経路:ネコのフンから経口感染、ブタ肉の生食、経胎盤感染
  • 日本での感染:あり

感染しているネコからヒトに感染します。トキソプラズマは世界中に広く分布していて、成虫はネコ科動物の小腸に寄生しています。直径12μmほどのオーシストがネコのフンと共に排出され、それを口にした哺乳類や鳥類が感染します。健康な大人の場合、まれに発熱やリンパ節の腫れなどが見られるものの、感染しても症状はほとんど見られません。しかし免疫力が落ちている場合、体内で急速にトキソプラズマが増殖してさまざまな臓器に感染するため、症状が重くなり命を落とすことがあります。また、妊婦が感染した時は、妊娠の初期だと流産の原因となります。妊娠の中期以降でも、母親は無症状でも胎児に感染して、出産後に目の脈絡網膜炎、水頭症、精神障害、運動障害などの病気を起こします。トキソプラズマ原虫は猫の消化管でしか繁殖(有性生殖)することができないため、宿主の行動をコントロールし、ネコに惹きつけられるように仕向けます。妊婦はネコのトイレの掃除は避け、それ以外のヒトでもネコのフンを片付けた後には石鹸を使ってよく手を洗うことが大切です。

ギョウ虫から感染?二核アメーバ

出典:寄生虫ビジュアル図鑑

DATA

  • 感染経路:経口感染
  • 日本での感染:不明

栄養型は5~12μmで、核を二個有しています。臨床症状としては、腹痛、持続性の下痢、食欲減退、体重減少、鼓腸などがあります。まれに好酸球増加、じんましん、掻痒症なども起きることがあります。感染経路はまだ明らかではありませんが、ギョウ虫が媒介生物となってヒトに感染すると考えられています。

複数の臓器を渡り歩く回虫

出典:寄生虫ビジュアル図鑑

DATA

  • 病名:回虫症
  • 感染経路:野菜などから経口感染
  • 日本での感染:あり

回虫の卵はヒトの排泄物に含まれます。回虫の卵が野菜などに付いて、ヒトの口に入ると感染します。化学肥料の普及により、ヒトに排泄物を肥料に使わなくなったことで回虫の被害は大きく減少しました。しかし、近年の有機農業ブームにより、感染者数は少しずつ増加傾向にあります。全世界では今でも約14億人もの感染者がいると推定されており、発展途上国では回虫による腸閉塞が原因で子供を中心に年間6万人も亡くなっていると推定されています。メスの成虫は体長22~35cm、オスの成虫は15~31cmです。口から入った卵は小腸で幼虫になり、体中を移動しながら成長します。少数の感染では症状はほとんどありませんが、多数の回虫に感染すると、じんましんや呼吸困難などの症状があらわれます。幼虫が中枢神経に入ると、けいれんなどの重大な症状があらわれます。小腸に寄生する成虫はヒトの腸粘膜に炎症を起こすため、腹痛や下痢あるいは便秘など、様々な症状をもたらします。便と一緒に排出された卵は、土壌中で一定期間発育しなければ感染力を持ちません。感染を広げないためには便を適切に処理する必要があります。

ヒトの筋肉にもぐりこむ旋毛虫

出典:寄生虫ビジュアル図鑑

DATA

  • 病名:旋毛虫症
  • 感染経路:ブタ肉やクマ肉の生食
  • 日本での感染:あり

主にブタ肉から感染します。感染後約1週間で腸の中で成虫になり、腹痛や下痢など、食中毒に似た症状が出ます。更に1週間経ち産出された幼虫が筋肉に移動すると、顔のむくみや発疹などの症状があらわれます。感染から4~16週ほどすると、筋肉痛やけいれんなどの症状が出ます。脳や脊髄に幼虫が達すると、脳炎や髄膜炎の症状を起こします。メスの寿命は1ヶ月程度で、その間に1匹のメスがおよそ1500匹もの幼虫を産むと言われています。メスの成虫は体長3~4mmで、オスの成虫は体長1.4~1.5mmほどです。日本での感染例はすべてクマ肉を食べたことが原因です。感染を防ぐためには生肉を食べないことが重要で、特に海外では注意が必要です。

けいれん発作や麻痺を起こす有鉤条虫(ゆうこうじょうちゅう)

出典:寄生虫ビジュアル図鑑

DATA

  • 病名:有鉤条虫症、有鉤嚢虫症
  • 感染経路:ブタ肉の生食など
  • 日本での感染:あり

世界かくちに分布し、特に中南米、アフリカ、インド、韓国、中国に広く見られます。成虫は体長が2~5mと非常に長く、成虫はヒトだけに寄生します。ヒトの便と共に排出された卵をブタやイノシシが口から摂取すると、腸の中で有鉤嚢虫と呼ばれる幼虫となり、血液やリンパ液に乗って筋肉をはじめとする体の様々な組織に運ばれて寄生します。ヒトは幼虫が寄生するブタ肉を十分な加熱をせずに食べると感染します。幼虫はヒトの小腸の粘膜に張り付いて成虫になります。成虫は小腸の粘膜を刺激し炎症を起こし、腹痛、下痢、便秘などの症状が出ます。成虫が産んだ卵が孵化して幼虫になると、全身に転移し皮下や筋肉に痛みのない小さなコブのようなものを作ります。幼虫が脳に寄生すると、けいれん発作や麻痺を起こすことがあります。国内産のブタ肉への寄生はまずありませんが、輸入ブタ肉には注意が必要です。よく火を通して調理することが大切です。

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