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セリアック病の認識の必要性高まる

2009年7月

2009年7月に発刊された学術誌『ガストロエンテロロジー』に掲載されているメイヨー・クリニックの研究によると、診断が下されていないセリアック病(CD)の罹患率は50年前と比べ4倍に増加しています。このことは、ウォーレン空軍基地で行われたWAFBコホート研究で1948年から1954年の間に9133人の健常な若年成人から採取された冷凍血清を検査し、年齢と性別が一致した2つのコホートとの間で組織トランスグルタミナーゼと筋内膜抗体に関する血清学的値を比較することで見出されました。

45年間にわたる追跡調査を行ったこの大規模な歴史的コホート研究によると、診断が下されていないCDは、CDであるという血清学的証拠がない被験者と比較してほぼ4倍の死亡リスク増加と関係していました。

研究グループはこの所見の要因として、穀物の工業処理における変化を挙げています。これはすなわち、過去40年間に起きた小麦遺伝学、パン加工、小麦プロラミンの酵素修飾などの変化を指します。そして、環境からの試練に対する人間の遺伝子変化は遅いため、人間は十分に早く適応することができなかったのです。

アレルギー虎の巻 ― 診断・管理ガイドライン

2010年12月に発刊されたアレルギー専門誌(The Journal of Allergy and Clinical Immunology)で、米国における食物アレルギーの診断・管理ガイドラインの改訂版が掲載されました。ニューヨーク市のマウントサイナイ医科大学のヒュー・サンプソン博士と、ベセズダのアメリカ国立衛生研究所のマシュー・フェントン博士は記者会見を開き、この新しいガイドラインで取り入れられた3つの重要点について説明しました。

第1に、過去10年から20年間にすべての年齢において食物アレルギーの有病率が著しく上昇しているという点で、かなりの意見の一致が見られます。米国人口の約3%から5%もしくは1000万から1200万人が食物アレルギーの影響を受けていると推定されています。興味深いことに、抗原に特異的なIgE抗体はたいてい生後2年以内に出現するにもかかわらず、大人であっても小児期以降に接触した食物抗原に対して新しい感作を起こす場合があります。未治療のまま放っておくと、アレルギーは喘息の悪化やアナフィラキシーなどの致命的な反応の危険因子になりかねません。

第2に、子供の食物アレルギーは固定的ではありません。若い年齢で食物アレルギーが発現した子供の約80%は克服することができます。しかし、小児期のアレルギーの消失は可変的なプロセスであり、個々の子供や抗原の型に依存します。子供にみられるアレルギー抗体の高い初期レベルは、時間とともに症状が消失する割合の低さと関係しています。卵アレルギーと牛乳アレルギーは非常に若い小児に最もよくみられるアレルギーですが、多くの場合10代の間に消失します。しかし、ピーナッツ、木の実、シーフードのアレルギーはより持続的であり、しばしば生涯にわたって続きます。これらのアレルギーを持つ子供のうち、わずか10%から20%のケースで症状が消失します。

第3に、患者のアレルギー精密検査において医師が直面する頻度が最も高い問題の一つは、アレルギー感作と臨床反応度の混同であるとサンプソン博士は考えています。アレルギー抗体の血清濃度の上昇や、穿刺試験による皮膚反応サイズの拡大は臨床反応のリスク増加と相関しますが、特定の食品に対する陽性結果は感作の兆候にすぎません。「感作」は、その患者が反応を示す確率が標準を超えていることを示しますが、反応の重症度に関する保証や予測はありません。サンプソン博士によると、感作が臨床反応と結びつくかどうかを断定するには、患者の病歴と経口負荷試験に基づき医師が検査結果を解釈することが必要です。このガイドラインでは、食物によって誘発されたアレルギー反応の同定の補助として、抗原特異的血清IgEの検査を勧めています。

上院公聴会で子供の健康に対する有害物質のリスクを検証

上院環境・公共事業委員会のスーパーファンド・毒物・環境衛生小委員会は2010年10月26日、公聴会「子供の環境衛生と有害物質」を開きました。これは、ニュージャージー州のローテンバーグ上院議員による指導のもと、環境における一般的な化学物質への子供の暴露が環境衛生に及ぼす影響を議論し、1976年に制定された有害物質規制法(TSCA)の立法改革を提案するために行われました。この法令により、環境保護局(EPA)は米国で製造、利用されている化学物質に対する権限を持ちますが、EPAが既存の化学物質の安全性を審査、断定する際に強制力を持つプログラムをTSCAは所有していません。さらに、TSCAが制定された当時に商業で用いられていた化学物質はすべて、評価されないままこの法令の適用を回避しました。公聴会を呼び掛けたリサ・ジャクソンEPA長官によると、現在TSCAのリストにある84,000種類を超える化学物質のうち、子供に対するリスクが調査されたものはほとんどありません。ローテンバーグ上院議員が提案した新しい法律のもとでは、化学製造業者は発売前に安全データを公表し、自社製品の安全性を証明しなければなりません。

CNNの医療担当責任者であるサンジェイ・グプタ博士は、昨年6月に放映された特別ドキュメンタリー番組「トキシック・アメリカ」の取材を通して得た実地経験に基づき証言を行いました。グプタ博士は取材から、アメリカ人の化学物質についての見方がEU加盟国のものとは異なり、健康への影響によって「有罪であると証明されるまでは無罪」と捉えられているため、それが不幸にも起こった場合には国民は皆モルモットと同じ立場に置かれることに気付いたと述べました。一方、EUはリーチ法(REACH, Registration, Evaluation, Authorization and Restriction of Chemicals)に基づき、より予防を重視した姿勢をとっています。化学物質とその安全な使用に関する法律であるREACHのアルファベットはそれぞれ、Registration(登録)、Evaluation(評価)、Authorization(許可)、Restriction(制限)、Chemicals(化学物質)を意味します。グプタ博士は、この問題に関して行動を起こしヨーロッパという隣人から学ぶべきであるとの意見を議会に対して述べました。

白血病、脳腫瘍、喘息、神経発生障害、自閉症、肥満などの小児期の疾病は増加傾向にあり、子供を持つ親や洞察力のある消費者らは今日商業目的で使われている約84,000種類の化学物質の長期にわたる安全性についての保証を求めています。演説者の多くが繰り返し述べたように、子供や発育中の胎児は環境毒物に対して特に脆弱です。1つ目には、大人と比べ子供はより多くの食べ物、水、空気を消費し、これらに含まれる有毒な化学物質を吸収します。2つ目に、小児や乳児は塵のある地面の近くで生活します。塵というのは、コンピューター画面、テレビ、家具、カーペット、マットレスなどに使われるポリ臭化ジフェニルエーテル(PBDE類)や難燃剤、カーテン、フローリング、壁紙、洗剤や石鹸に使われるフタル酸塩、プラスティック容器、瓶、ピザ箱、食料品店のレシートに使われるビスフェノールA(BPA)から出る毒性物質が蓄積したものです。塵には、屋外からの農薬や除草剤の残留物、コールタールのシーリング材からの多環式芳香族炭化水素(PAH)なども含まれる可能性があります。3つ目に、子供は生物学的にも脆弱です。発達途中にある神経、免疫、生殖のシステムや肺などの器官はまだもろく、毒性物質によるダメージは多くの場合回復不能であり、生涯にわたる機能障害をもたらします。特に、成長中の胎芽、胎児、そして新生児はたった一回のわずかな暴露に対しても非常に脆弱です。臓器が発達する重要な時期における暴露が、生まれてくる子供の健康や幸せを永久に害してしまうかもしれないのです。

自閉症と免疫性障害を抱える息子・ハリソンの母親であるニュージャージー州のリサ・ユグナン博士は、息子が生後18か月のときに語彙や運動能力が落ち始め、2歳で自閉症と診断された時には喘息、非IgE媒介の食物アレルギーや自己免疫問題などの健康問題にも悩まされていたと証言しました。ユグナン博士は環境科学とヒト暴露評価に関する博士号を保有し、その分野の科学者として、また発達上・健康上の問題を持つ子供の母親として、自分自身、夫、自分の両親の幼児期における毒物暴露の長期的な影響や、ハリソンの後の世代への影響についての疑問や不安を抱えています。

公衆衛生学修士号と博士号を持ち、コロンビア大学にある子供の環境衛生センター(CCCEH)の所長を務めるフレデリカ・ペレーラ氏は証言の中で、神経発生的障害と有害物質との関係について話しました。米国では小児の17%が学習障害もしくは注意障害と診断されており、それらの病因が一貫して内分泌攪乱物質(EDC、ホルモン産生と活性を妨げる化合物)によるものであることが研究から明らかとなっています。EDCへの暴露による合併症としては、神経、生殖、免疫に対する影響や発生への悪影響などが挙げられます。ペレーラ博士は12年間にわたる国際的な研究を行いましたが、妊娠時から母子の経過観察を行うコホート研究もこれに含まれています。この研究の目的は、妊娠中に子宮に侵入する汚染物質や化学物質を特定・測定し、子供の成長時の発達や健康に対するそれらの物質の影響を分析することでした。ペレーラ博士は、ニューヨーク市で行われた2つのコホート研究の結果から、空気、妊婦の尿サンプル、新生児の臍帯血、幼児から検出された化学物質(フタル酸塩、ビスフェノールA、PBDFF類、有機リン酸系殺虫剤、クロルピリホス)を強調しました。これらは環境の至る所に存在すると同時に成長中の胎児や小児にとっては危険な化合物であり、妊娠期間の短縮、遅発性および低下した精神運動・精神の発達、注意力欠陥、多動、低いIQスコアと関連しています。CCCEHの研究は進行中ですが、これまでの所見は胎児や小児の毒物暴露と神経発生における有害な効果との関連を強く支持するものです。同様の結果はポーランドと中国の妊婦について行われたコホート研究にも見られました。

フタル酸塩は世界で最も使われている生産用化学物質の一つであり、その使用量は年間180億ポンド以上にのぼります。疾病管理センター(CDC)の第4暴露報告書によれば、蔓延した環境暴露によって私たちの尿には複数のフタル酸塩代謝物が含まれています。フタル塩酸代謝物であるフタル酸モノエチル(MEP)は、米国民やオランダとワシントン州の妊婦人口の間で非常に高いレベルでみられる化学物質です(Center for Disease Control & Prevention 2010, Ye et al., 2008., Schreder, 2009)。MEPはフタル酸ジエチル(DEP)の代謝物であり、フタル酸塩は内分泌攪乱物質であることも既述の通りです。これらは私たちのホルモンや内分泌系に影響を及ぼし、生殖異常や先天異常、特定の種類の癌を引き起こす可能性があります。DEPは化粧品、個人ボディケア用品、香水、家庭用クリーナーなどに使われています。多くの場合、石鹸や洗剤など家庭用クリーナーのラベルには、香料を含む内容物の9割以上の原材料が記載されていません。

環境中の毒性物質に対して最も脆弱なのは、発育中の乳児を含む最も若い人口です。議会が予防的な化学物質政策に向けて重要な問題に取り組む中、患者の慎重なスクリーニングに欠くことのできない臨床ツールとして、臨床検査が医師らに使われ続けています。

環境汚染物質パネルは、6つの環境毒性物質の代謝物に加え、フタル塩酸の代謝物であるフタル酸モノエチル(MEP)を測定することができます。このパネルは、Dip’ N Dry採尿ストリップを用い、分析物の安定性と再現性を高めています。簡単に受けることができます。

U.S. Senate Committee on Environment & Public Works. (2010) Hearing: Subcommittee on Superfund, Toxics, and Environmental Health Field Hearing entitled, "Toxic Chemicals and Children's Environmental Health." Available from: http://epw.senate.gov/public/ Ye, X., Pierik, F., Hauser, R., et al. (2008). Urinary metabolite concentrations of organophosphorous pesticides, bisphenol A, and phthalates among pregnant women in Rotterdam, the Netherlands: The Generation R Study. Environmental Research, (108)2:260-267. Schreder, E. (2009). Earliest Exposures A Research Project by Washington Toxics Coalition. Available from: http://watoxics.org/publications/earliest-exposures Center for Disease Control and Prevention (2010). Fourth National Report on Human Exposure to Environmental Chemicals. Available from: http://www.cdc.gov/exposurereport/

報告:ストレス、うつ病とアロスタティック負荷バイオマーカー

疾病管理予防センター(CDC)によると、米国では成人の10人に約1人が現在うつ病を患っていると訴えています。うつ病の重症度と種類は、軽度の悲しみから臨床的に定義された大うつ病性障害まで、二日間のものから二週間、もしくは二年間のものまで多岐にわたります。大うつ病性障害は、一時的な悲しみや損失の感情よりも深刻な病態を指し、男性と比べて女性のほうがより一般的に診断されます。大うつ病性障害の生涯発生率は女性で20%であるのに対し、男性はその約半分に発生します。自殺発生率と同様、うつ病の数は年齢とともに増加します。自殺は米国における主要な死因であり、うつ病で最も頻繁に起こる合併症です。臨床現場では、大うつ病性障害の主症状は疲労、頭痛、体重変化や腹部の異常など身体的なものが多くみられます。以下の症状のうち最低でも5つのものに当てはまり、顕著な苦痛や機能障害がほぼ毎日、最低二週間続いた場合には大うつ病性障害と診断されます。

  • 悲しさやむなしさを感じる
  • イライラもしくは活力の衰えを感じる
  • アクティビティへの興味もしくは喜びの減少
  • 疲労もしくは活力の喪失
  • 食欲の変化と体重の増減
  • 倦怠感
  • 不眠もしくは過度の睡眠
  • 思考もしくは集中の困難
  • 死もしくは自殺について繰り返し考える

大うつ病性障害は多因子性の疾患です。ある種の投薬、乱用物質、アルコール、低い社会経済学的状態を含む慢性の健康状態は、より高い発生率と関連しています(例えば、肥満、神経性疾患、自己免疫疾患、慢性痛)。遺伝的感受性もうつ病に寄与しており、情動障害またはパニック障害の家族歴はうつ病のリスクを高めます。心理社会的ストレス要因なしに大うつ病性障害が起こる可能性があると考えられてはいますが、ストレスや人間関係の喪失、社会的援助の縮小と対立的な人間関係がリスクを高めることは確実です。特に、若年期における重大な喪失や虐待の経験は、後年に大うつ病性障害を発症しやすくなる素因となります。

精神的ストレスは炎症誘発性サイトカインの産生を促します。炎症誘発性サイトカイン(すなわち、IL-1, IL-6, TNF-α, IFN-γ)は大うつ病性障害の危険因子として知られています。大うつ病性障害はこれらメディエーターの産生増加と集積の両方と関係し、脳内のトリプトファン代謝に影響を及ぼすことがわかっています。トリプトファンはセロトニンの合成に関与している必須アミノ酸で、セロトニンは不安感、落ち着きのなさ、衝動性、攻撃性、うつ病などの気分を除去する神経伝達物質です。

トリプトファン代謝には、キヌレニン経路とセロトニン経路の2つがあります。前者は、炎症誘発性サイトカインによって促される酵素インドールアミン2,3‐ジオキシゲナーゼによって引き起こされます。この経路の中間物は、神経毒性3-ヒドロキシキヌレニン、キノリン酸、神経保護性キヌレン酸を含みます。保護的なキヌレニン経路と変性のキヌレニン経路の代謝物の不均衡(すなわち、キノリン酸/キヌレン酸比率の増加)は、慢性のうつ病と関連する神経変性的な変化において重要な役割を果たすと考えられます。加えて、活性化された酵素インドールアミン2,3‐ジオキシゲナーゼはこれら2つの経路のバランスを変化させ、トリプトファン代謝のキヌレニン経路に有利に働きます。これによりセロトニン経路から基質が奪われ、結果としてセロトニン合成が減少します。脳内でセロトニンが不足もしくは減少することにより、うつ病につながります。

トリプトファン代謝におけるキヌレニン経路とセロトニン経路のバランスの変化は、ストレスによって誘発されます。住環境、職場、人間関係、コミュニティ、健康に有害な行動様式などのストレス源への長期的及び/または反復的な曝露が大うつ病性障害の発症に先立ち、年齢に関連した健康問題や障害に対するリスクを徐々に増します。短期的には、ストレスへの暴露は視床下部脳下垂体‐副腎系(HPA)、自律神経系(交感神経および副交感神経)、心血管、免疫系による適応的、保護的作用を引き起こし、カテコールアミンやグルココルチコイド、サイトカイン、セロトニンの代謝回転も高まります。しかし長期的には、これらのシステムのなかで頻繁および過度に反応が起きた結果、過剰にメディエーターに暴露し、体の器官に害を及ぼす可能性があります。

アロスタティック負荷という言葉は、長期的な生理学的ストレスにより蓄積された悪影響や消耗状態を表すのによく使われます。その典型例は、体が副腎グルココルチコイド(コルチゾール)を浪費することへの代償にみることができます。ストレスがかかっているときの短期的な正味効果はグルコースの産生とその保存です。しかし、副腎系が繰り返し活性することで血中のコルチゾールが高濃度な状態が長期にわたって続くと、インスリン抵抗性、腹部肥満、アテローム性動脈硬化、高血圧などのアロスタティック負荷につながります。

臨床現場では、キノリン酸/キヌレン酸比率を含むアロスタティック負荷を測定するため、医師らは様々なバイオマーカーを用います。その例として、ウェスト・ヒップ比、心血管マーカー、グリコシル化ヘモグロビン、炎症マーカー、尿中セロトニン、カテコールアミン代謝物、同化作用対異化作用のバランスの評価が挙げられます。

キヌレン酸、キノリン酸、セロトニン、カテコールアミンの代謝産物は、代謝プロファイルで測定することが出来ます。

米国の子供約600万人に食物アレルギーが影響を及ぼしている可能性

(2011年6月20日 ロサンゼルス・タイムズ紙にも掲載:http://articles.latimes.com/2011/jun/20/news/la-heb-food-allergy-children-20110620

米国の小児科専門誌「ピディアトリクス」で2011年に発表された研究で、食物アレルギーが米国のかなりの数の子供に影響を及ぼしていることが示されました。これは18歳以下の子供が一人以上いる4万家庭を調査するという大規模なもので、集められたデータに基づき、研究者らは米国の子供の8%(約600万人)が食物アレルギーによる影響を受けていることを見出しました。これらの子供のうち、30.4%が複合的な食物アレルギーを持ち、38.7%は過去に重篤な反応を経験していました。調査でもっとも多く報告されたアレルギーはピーナッツ(25.2%)、牛乳(21.1%)と甲殻類(17.2%)でした。

食物アレルギーの有名な特質は、問題となる食物のタンパク質またはエピトープに対するIgE抗体の産生です。この種のアレルギーは、皮膚、消化管、気道内の組織肥満細胞と好塩基球と結合した食物特異的IgE抗体が、体内を循環する抗原と接触、結合したときに発現します。この結合により、細胞はヒスタミン、プロスタグランジン、ロイコトリエン、サイトカインを含む炎症伝達物質を放出します。アレルギーに関連する不快な症状(胃痙攣、下痢、嘔吐、蕁麻疹、そう痒、腫れ)の多くはこれらの合成物が原因であり、ごく微量のアレルギー誘発性食物に暴露しただけでも反応が引き起こされることがあります。

食物アレルギーは複数の免疫機序によって引き起こされている可能性があります。典型的なタイプⅠはIgEによって媒介される即時型の反応で、喘息、花粉症、アトピー性皮膚炎と食物アレルギーとの密接な関係のために最も徹底的な研究がなされてきたアレルギーです。タイプⅠアレルギーの多くのケースで複数の抗原に対する血清IgEの上昇がみられます。さらに、IgE媒介アレルギーは潜在的に致命的なアナフィラキシー反応を誘発することがあるため、特に重要であるといえます。

食物アレルギーの有病率は、全ての年齢層にわたってここ最近10年から20年の間に著しく増加しているものの、この傾向の理由は明らかとなっていません。アレルギーの発現には遺伝子が影響している可能性があり、アレルギーを持つ両親の子供はアレルギーになりやすいと言われています。しかし、もちろんこのことだけでここ数十年の流行性の上昇を説明することはできません。アレルギーは遺伝、栄養、免疫、環境曝露(抗原性反応を高めるタバコの煙や汚染物質など)の複雑な相互作用の結果として生じます。

医師がスクリーニングや治療を適切に行うためには、信頼できる臨床検査が不可欠です。

大気汚染と乳児

ベンゼンは、交通からの大気汚染に対する曝露のマーカーとして知られています。これまでに、ベンゼンと交通からの排気によるその他の芳香族炭化水素類の複合効果が、未熟児出産、出生体重と新生児の頭囲に影響することが示唆されています。

Aguileraらによって最近行われた研究では、スペイン・サバデルのコホート研究の一環として、交通による大気汚染によくみられる芳香族炭化水素類への曝露が562人の妊婦の胎児成長に及ぼす影響を調査しています。この研究により、妊娠初期からベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、キシレンへの曝露(非住宅屋外環境で1日に2時間未満)があった場合、妊娠中期~後期における胎児の両頭頂径(BPD)の成長に低下が見られることが超音波検査による測定で示されました。BPDとは、胎児の頭頂骨の端から端までの長さを測定した横径を指し、妊娠期間の評価、胎児の発育の観察、そして胎児の体重を測定するために用いられます。

本研究から得られる結論の一つは、妊娠初期における交通からの大気汚染への日常的な曝露が胎児の発育に悪影響を与える可能性があるということです。

環境汚染物質パネルは、内分泌かく乱物質であると考えられているフタル酸塩に加え、ベンゼン、トルエン、キシレンを含む数種の芳香族炭化水素類の代謝物を測定します。この検査は、Dip'N Dry採尿ストリップを用いて分析物の安定性と回収の効率化を高めています。

ストレスと大気汚染

ストレスの多い社会に生きている私たちは、それによって惨めな気分になったり健康が悪化してしまうことがあります。あなたのストレスの原因は何でしょうか?近所での暴力、交通渋滞、騒音や汚染の激しい場所での仕事など、さまざまなものがあることでしょう。ストレスへの長期曝露は、疾患リスクに影響すると長く考えられてきました。また、ストレスが認められるときの大気汚染への曝露が、気道疾患に影響を及ぼすことも示唆されています。

2010年6月に発行された“Journal Environmental Health Perspectives”によると、研究者らは慢性的・心理社会的ストレスや生理的な悪影響が交通による大気汚染とリンクしていることを見出しています。

研究者らは、大気汚染曝露に対する呼吸反応から、慢性の社会的ストレスの影響を調べようと試みました。この実験では、24匹の生後12週間目の雄のラットを、二変数によって4つの群に無作為割付しました。すなわち、ストレス環境トリガーへの曝露を受けたラットと受けていないラットを、それぞれ1日につき5時間、用量を均一にするために制御しながら濃縮周囲粒子(CAP、大気汚染の細かい粒子状物質)またはろ過空気(FA)に曝露させました。より高齢の雄ラットのケージに週2回、20分ずつ長期のストレス事象を与え、気道疾患と関連する呼吸機能と血液由来の炎症マーカーを分析したところ、ストレスを受けたラットはストレスを受けなかったラットと比較してより高い白血球数、C反応性蛋白レベルと腫瘍壊死因子アルファを示しました。さらに重要なことに、ストレスを受けたラットのうち、CAPに曝露したラットの呼吸反応が高速で浅い呼吸パターン(呼吸数の増加、循環や流量の低下)を示しました。

サンプルサイズは大きくなかったものの、研究者らはこれらの所見に基づき、慢性的ストレスが大気汚染に対する呼吸反応に悪影響を及ぼす可能性を示唆するとともに、これらの効果を完全に理解するためには、より大きいサンプルサイズで長期的な調査をすることが必要であると述べています。ヒトに関しては、暴力や知覚されたストレスなどのストレス要因が交通関連の大気汚染という環境曝露と合わさった場合における、集団内での罹病性形成の可能性を示唆しました。

日々のストレス要因の中には避けることのできないものもあります。しかし、私たちは汚染への曝露量を評価し、健康実現のための方策を見つけるために予防的措置をとることはできるのです。車やトラック、バスを動かすための化石燃料の燃焼や、工業が作り出す揮発性の有機化合物(ベンゼン、トルエン、キシレンなど)を含む化合物や細かな粒子状物質が合わさったとき、これらのガスや粒子は私たちが呼吸する空気中にエアゾールを放出します。

USBioTekの環境汚染物質プロファイルは、内分泌かく乱化学物質である可能性を持つフタル酸塩に加え、ベンゼン、トルエン、キシレンを含む数種の揮発性の有機化合物に対する被験者の曝露を評価する簡単な尿検査です。尿サンプルは、分析物の安定性と回収の高知床を高めるためにDip'N Dryストリップを用いて採取します。採取されたサンプルは、室温・普通郵便で送っていただくことができます。

制酸薬と食物アレルギー

胃酸の産生を減らすために使われるH2受容体拮抗剤やプロトンポンプ阻害薬などの抗潰瘍薬が胃内消化を遅らせ、食物過敏症やアレルギーの増加につながる場合があるということが、2005年にオーストラリアでUntersmayrらによって行われた研究により明らかとなりました。この調査に参加した152人の患者(平均年齢65.9歳)の血液サンプルを、抗潰瘍薬を用いた3か月間の治療の前後に採取し、19の食物に対する食物特異的IgEレベルの増加を免疫ブロット法で量的に分析しました。

3か月間の抗潰瘍薬使用後、25%の患者の血液に食物特異的IgEの増加が見られました。そのうち、もともと食物特異的IgEが存在していたのは10%、新しくIgEの産生が見られたのは15%でした。年齢が対応する50人の健常対照群のIgEレベルは変化しなかったことから、季節的な効果の可能性は除外されました。著者らは、3か月間の抗潰瘍薬治療によって食物抗原に対するIgE反応が増加する相対リスクは10.5%であると結論付けました。

一方で、ホルモン受容体陽性の腫瘍(例えば胸部、卵巣、子宮、頸部、前立腺のエストロゲン受容体陽性の腫瘍)は、対抗するエストロゲンが増殖の進行中に存在するか否かに依存します。

抗潰瘍薬投与開始から3か月後には25%であったのに対し、抗潰瘍薬投与の中止から5か月後の時点では、上昇した食物特異的IgE値の持続が6%の患者に見られました。

抗潰瘍薬投与の中止から8か月後、上昇したST2(Th2リンパ球活動のマーカー、アレルギー性炎症の調節因子)の値と平行して、長期の感作がまだある程度観察されました。

一般的な市販薬である制酸薬は、胸焼けや消化不良など自己診断による症状の多くに使われています。これらの薬は胃酸の量を減らすため、長期的な服用は胃内消化の低下を引き起こし、アレルギーを起こす潜在力を保持した食品タンパク質をもたらす可能性があります。

完全な研究報告はhttp://www.fasebj.org/で入手できます。

Untersmayr, E., Bakos, N., Scholl, I., et al. (2005)
Anti-ulcer drugs promote IgE formation toward dietary antigens in adult patients
The FASEB Journal, 19, 656-658

食物過敏と多発性硬化症

多発性硬化症(以下MSと表記)の診断の確定については、特別な信頼性の高い検査法あるいは検査というものは存在しません。 器質的原因が容易に見つからない場合、初期症状である頑固な疲労、麻痺、脱力感、視覚障害等の症状は、単に心因性のものとして軽く扱われる可能性があります。

食物とMSの間の関係性は特に興味深いものです。 腸の免疫機構は身体の免疫機構全体のおよそ3分の2を構成しており、遭遇する病原体には適切に反応し、我々が摂取する食物にはほぼ反応しない(この現象を経口寛容と言います)という、絶妙な役割を持っています。 そして、寛容が欠如することが、アレルギーや自己免疫状態を含むたくさんの通常疾患の根本的要因である可能性があります。1

面白い研究では(Reichelt et al.,2)、 ELISA法を使用し、多発性硬化症の発症中の36人の患者を対象に、一般的な食物アレルゲンに対する血清中のIgAおよびIgG抗体を測定、中間年齢は44歳、これを中間年齢38歳の正常対象の検査結果と比較したものがあります。 同時に行った正常対象と比較し、MS患者の検査結果では、グリアジン、グルテン、カゼインに対し、統計学的に極めて高値のIgAおよびIgGが見られました。 MS患者のうち、6名は、グリアジンとグルテンに対し、セリアック病のカットオフ値を上回るIgA値を示しましたが、抗組織トランスグルタミナーゼ抗体に対しては陰性(セリアック病の可能性小)でした。これらの所見に反して、より以前の研究(Hunter et al.,3) では、あるMS患者の研究グループにおけるグルテンやグリアジンへの抗体上昇は見られませんでした。

グリアジンとグルテンに対するIgA抗体は、グルテン性小脳性運動失調において証明されており、また、ヒトの脳障壁脈管系への親和力を有することが示されています。4, 5

食物特異的抗体とMSの関連性に関する解釈は、研究母集団内における変数と同様、方法論的な相違によって複雑なものになり得ます。 研究は、病気との関連性を現す一方で、検査測定値も現すかもしれませんが、状態 - 一致あるいは因果関係における関連性の本質を決定することは多くの場合困難でしょう。 疾病に対する食物応答の構成要素を明らかにするためには、臨床的慎重さが必要です。

食物免疫複合体が、統計学的に、そして際立って低度の全体的炎症と関連していることは報告されています。 6 それは敏感な人の体内において強度の胃腸の透過性やこれら食物抗原に対する誤った処置によって現象の連鎖が起こり、組織へのこれら免疫複合体の付着をもたらし、炎症を伴うという仮説が多くの人によって立てられています。7

  1. Plummer, N. The gastrointestinal tract, an overview. Pharmax LLC.
  2. Reichelt, K-L., et al. (2004). IgA antibodies against gliadin and gluten in multiple sclerosis. Acta Neurol Scand, 110:239-241.
  3. Hunter, A.L., et al. (1984). Gluten antibodies in patients with multiple sclerosis. Hum Nutr Appl Nutr, 38A:142-143.
  4. Hadjivassiliou, M., et al. (2002). The humoral response in the pathogenesis of gluten ataxia. Neurology, 58:1221-1226.
  5. Pratesi, R., et al. (1998). Serum IgA antibodies from patients with celiac disease react strongly with human brain blood-vessel structures. Scand J Gastroenterol, 33:817-821.
  6. Wilders-Trusching, M., et al. (2008). IgG antibodies against food antigens are correlated with inflammation and intima media thickness in obese juveniles. Exp Clin Endocrinol Diabetes, 116:241-245.
  7. 7 Brostoff, J., Challacombe, S.J. (Eds.). (2002). Food allergy and intolerance. London. Elsevier Science Limited.
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